株主手帳連載【エネルギー危機関連銘柄】

私が連載する投資月刊誌「株主手帳」の2022年8月号掲載原稿です!迫るエネルギー危機。関連銘柄についてのポイントをお伝えします!

2022年3月、東京都内でも最高気温が10度を下回る季節外れの寒い日が続いた頃、東京電力管内で予測不能な大規模停電の恐れが高まったことから、節電協力が呼びかけられました。電力使用量を減らすため鉄道各社は運行を減らすなどして急遽対応し、企業、一般家庭の協力もあり都内の大規模停電は免れました。私たちの暮らしに迫るエネルギー危機と、その関連銘柄について解説します。

続く電気代、ガス代、ガソリン代の高騰

日本のエネルギー自給率は11%とG7で最も低く、電力需要に対する供給の余裕の度合を示す予備率は、本来3%必要なところ、東京電力(9501)管内の予備率はマイナス0.6%と、ぎりぎりの状態です。火力発電所の休廃止が相次ぎ、原子力発電所の再稼働は遅れているところに、ロシア問題により、原油・天然ガスの値上がりが続いている状況。読者の皆様も日々の電気・ガス代、ガソリン代の高騰を肌で感じていることと思います。

車載セキュリティソフトの需要拡大

エネルギー価格の高騰は国民の負担に直結し、生活への影響が避けられません。

6月に政府が決定した経済財政運営と改革の基本方針(骨太方針)では原子力の扱いについては「最大限活用」と明記しており、昨年の「可能な限り依存度を低減しつつ安全最優先の原発再稼働を進める」との表現から一歩踏み込んだ格好となりました。野党からも再稼働を訴える動きが出てきており、関西電力(9503)は福井県の美浜原発を従来計画から前倒しして運転再開するとしています。原発関連銘柄は他に、原子力関係機器を製作する木村化工機(6378)助川電機(7711)日立(6501)、日揮(1963)があります。

日本だけでなく世界がエネルギー問題を抱える

エネルギー価格の変動に対する脆弱さの問題は、日本に限ったことではなく、世界に広がっています。各国の対応を見てみましょう。イギリスは安定したエネルギー供給のため再生エネルギーや原発の増設計画を公表。ドイツはLNGを増やそうと受け入れ基地の増設を計画、送電網を欧州全体でつなげ、電力を融通できるよう対策を整えています。原子力発電は脱炭素の有力な手段として欧米では再評価する動きが出てきており、米国やフランスは相次いで増設計画を表明しています。

ロシアウクライナ問題を発端としたエネルギー危機は、欧米諸国では温暖化ガス排出の少ないクリーンエネルギーへの転換、「脱炭素」がさらに後押しされる理由ともなっているようです。このような再生可能エネルギーへの投資拡大の動きはこれからの日本でも進むのではないでしょうか。

太陽光発電を手掛けるウエストHD(1407)は、東京電力中部電力(9502)が折半出資するJERAと資本提携し、火力発電所の跡地も活用して全国7,000ヶ所に太陽光発電を新たに開発します。電力は他社に売却するほかウエストHDの電力小売事業を通じて家庭にも販売、夜に発電できない太陽光の弱点を補完するため、ガス火力で発電した電気をセットで販売することも計画しています。火力発電量で日本首位のJERAが太陽光とタッグを組むという、まさに「エネルギーの多様化」が進んでいます。

環境負荷の低いエネルギーへの需要高

新電力のイーレックス(9517)は電力自由化の流れで固定価格買い取り制度の利用や電力小売りなどで事業規模を拡大している企業です。世界にも目を向けており、急速な経済成長で電力需要に供給が追い付いていないベトナムでの再生エネルギー発電、バイオマス燃料開発の展開。世界ではますます環境負荷の低いエネルギーに対する需要が高まっているのが分かります。

いかがでしたでしょうか。政府は引き続き節電を呼び掛けていますが、とはいえ時に冷暖房は命にかかわるため、節約を徹底することは現実的でありません。他国の化石燃料に依存するリスクの大きさを個人レベルでも実感しますが、電気が確保できなければ製造業は国外に流出し、経済を直撃し、脱炭素どころではなくなります。エネルギー危機と気候危機、どちらも諦めることなく、積み残してきた課題に対応する国家戦略の立案が急務と言えます。

ポイント!

エネルギー問題は経済活動の土台。やみくもに節電を呼びかけるのではなく、国には現実的なエネルギー戦略を見直していただきたいものです。

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