株主手帳連載【セキュリティ関連銘柄】

私が連載する投資月刊誌「株主手帳」の2022年7月号掲載原稿です！注目のセキュリティ関連銘柄についてのポイントをお伝えします！

トヨタ自動車（7203）の取引先が受けたサイバー攻撃が発端となるシステム障害で、トヨタの国内全工場が停止に追い込まれたニュースは、読者の皆様も記憶に新しいのでは。帝国データバンクが3月中旬に実施した調査によると、大企業で「1カ月以内にサイバー攻撃を受けた」と回答したのは34%にのぼるそうです。サイバー攻撃の主な狙いは身代金。情報漏洩や機能不全などをちらつかせます。身代金の支払い能力が高いとみなされ、取引先が多く侵入経路も広い大企業がよりターゲットにされやすく、日常的にサイバー攻撃の対象になっています。ただ、今回の事件は大企業本体だけでなく、関連する子会社からの侵入が結果的に親企業の企業活動を止めたため、大企業のみならず、その取引先もセキュリティ対策が必須だと世に知らしめるインパクトがありました。

世界中で激増するサイバー攻撃

事実、サイバー攻撃は年々増加傾向にあり、攻撃側も大企業並みに分業して戦略的に攻撃を仕掛けるなど、巧妙化の傾向にあります。そうした流れを受け、政府は情報通信や電力など、14分野の重要なインフラ事業者にサイバー攻撃への備えを義務付ける方針を発表しました。このように、DXが加速する時代に需要が拡大され、セキュリティ関連銘柄は大注目なのです。

車載セキュリティソフトの需要拡大

自動車大手の地位は、EVシフトで揺らぎ始めています。EVの部品数はガソリン車の半分程度とされ、主要部品を組み立てれば製造できるため、ガソリン車より参入しやすく、これまでの自動車メーカーの競争の優位性が製造ノウハウから、ソフトウェアに移っていきます。言うまでもなく自動車は命を乗せる乗り物ですから、ハッカー攻撃によってＥＶが誤作動することは防がなくてはなりません。ネットワークセキュリティの提供を主業務とするアズジェント（4288）やトレンドマイクロ（4704）は車載ネットワークの侵入検出やシステム保護をするソフトウェアを提供しています。

トレンドマイクロ（4704）はPC向けセキュリティソフト「ウィルスバスター」で知られていますが、18年にパナソニック（6752）、21年には富士通（6702）や日立製作所（6501）、日本マイクロソフトと提携し、コネクテッドカー分野で着実に体制を作っています。台湾の鴻海（ホンハイ）精密工業が進めるEVの共同開発の計画に中核メンバーとして参画し、EVのサイバー対策を第二の成長分野に位置づけ、年々拡大する車のサイバー攻撃対策市場で存在感を示しています。

企業もセキュリティ対策を強化

企業のセキュリティ対策をコンサルティングする会社をいくつか見てみましょう。デジタルアーツ（2326）は企業のテレワーク普及によるWEBセュリティ需要やメールセキュリティ需要の高まりにより、ソフト売上が好調です。また学校のICT教育促進のGIGAスクール構想の案件で、フィルタリングソフトの特需もありました。

ラック（3857）はJapan Security Operation Center（JSOC）という日本最大のセキュリティ監視サービスを提供しています。セキュリティアナリストが顧客の監視対象機器のログを常に監視・分析していて（その数は一日あたり14億件を超えています）自社開発のセキュリティ監視・運用支援システムを用い、高度なインシデント対応を実現しています。

セキュリティも多様化が進む

セキュリティ対策は、外部からの侵入とも限りません。エンカレッジ・テクノロジー（3682）は企業の中での情報流出などを防ぐためのシステム証跡監査ツール市場で高いシェアを獲得しています。システム証跡監査ツールとは、各個人がシステムに対して行った操作内容、例えばアプリの立ち上げやキーボード操作などを自動で取得し、その録画内容をリアルタイムで監視し、アラートを出す不正行為を未然に抑止するツールです。また、セキュリティ×教育を掲げ、セキュリティ対策が間に合っていなかった中堅企業向けにセキュリティ教育を行うなど、ソフトだけでなく教育面からもアプローチを行っています。

いかがでしたでしょうか？金融システムやエネルギーなど生活の基盤が被害を受ける事態は避けたいものです。日々進歩する攻撃に対抗する体制作りを国をあげて築く時が来ていると捉え、セキュリティ関連のニュースに注目していきたいと思います。