株主手帳連載【ダイバーシティ企業】

私が執筆している投資月刊誌「株主手帳」の最新の原稿を編集部のご協力を頂いてこちらにも共有させていただいています!

企業の「稼ぐ力」を見定める鍵となる「ダイバーシティ」

2022年の株式相場は米国の利上げ観測やウクライナ情勢緊迫など市場の不透明材料が多い波乱の様相です。そんな中、中長期的な成長性よりもリターンの確実性が高いとして、多様性戦略の強化や人材投資を進めている「ダイバーシティ企業」へ関心が高まっていると言えます。 2021年の株式市場では、「脱炭素」や「ESG」がキーワードとなり関連銘柄の上昇が目立っていました。いわば「ESG」の「E」に注目が集まっていました。今後はさらにESGの「S」、つまり人材の多様性や人的資本強化に企業が真剣に取り組み、ダイバーシティの流れに乗っているかが今後の企業の「稼ぐ力」を見定める一つの指標となりそうです。

女性経営者のエステー(4951)

女性の経済・政治における我が国の参加率の低さは、何かと取り上げられますが、女性経営者ならではの目線で経営改革を実施し、業績を伸ばしてきた企業を見てみましょう。エステー(4951)の鈴木貴子社長は家庭で使われる消費財にも関わらず、それまで商品開発で欠けていた女性の目線を積極的に取り入れました。商品の機能価値と情緒的価値双方をバランスよく両立させ、家庭に溶け込み、より安らげる商品開発を通じて商品力、付加価値を向上させたのです。均一化された組織では現状を良しとしてしまい、ユーザーに近い視点が失われてしまいますが、異質な存在である同社長が一石を投じた形でしょう。同社は2030年までの中長期ESG推進プランとして、具体的なアクションプランを掲げており、持続的な成長のためにイノベーション創出は欠かせないとし、人事面では女性、外国人、中途採用者等多様な人材登用を行うとしています。

女性経営者が率いる企業は他に化粧品・食品向けのプラスチック容器製造の竹本容器(4248)、企業PRや販促支援のサニーサイドアップ(2180)、電子部品用フッ素高純度薬品でシェア国内7割、世界8割のステラケミファ(4109)などがあります。

働き盛りの男性にも「ダイバーシティ」の波が

ダイバーシティの波は、女性や子育て世代だけに関わる問題に限らず、働き盛りの男性にも押し寄せてきています。団塊世代が後期高齢者になる「2025年問題」が迫り、40~50代社員の約6割が3年以内に家族の介護に直面する可能性があるからです。中核社員の多くが仕事と介護の両立に直面する時代に、介護負担を抱えた社員への理解とサポートが欠かせません。

ハウス食品(2810)は来る「介護時代」を見据え、全社員にむけて介護研修を行い、介護の実態や費用、仕事との両立などについての理解を社員に促しています。介護目的での柔軟な働き方ができる制度、社内環境を整え、介護による離職を防ぐ考えです。また丸紅(8002)は介護支援の非営利組織(NPO)と契約し、誰でも介護の専門家へ相談したり、支援を依頼できる体制を整え、ビジネスケアラー(家族の介護をしながら就業する人)の孤立を防ぎ、就労を続けることを支援しています。

多様な働き方がはじまった

多様な就労を促す企業としては、介護や資格取得、不妊治療など、様々な理由で長期休職制度を整えたJR東日本(9020)、希望者を対象に週休3日制を導入するパナソニック(6752)、最長6年間の育児・介護休暇制度をはじめ、社長自らが積極的に家事育児に携わる様子を発信するサイボウズ(4776)などがあります。

これまでは「会社で」「横並び」だった就労環境や人事制度はコロナ禍をきっかけに転換の時を迎えています。それまでは「在宅勤務」「ウェブ会議」「時短勤務制度」は社員のごく少数派の「働き方に制限があるもの」が利用する制度と捉えられていたのではないでしょうか。ところがそれらは多数派の社員にとっても需要があり、更には、業務効率化、企業の生産性を引き出すツールであったと多くの働く人々が認識するようになりました。

ポイント!

いかがでしたでしょうか?今後も進展する高齢化社会や成熟経済下では、それまでの常識を疑い、新しいことを限られたリソースで挑戦する姿勢が求められます。今後もダイバーシティ経営に取り組む企業の成長から目が離せません。

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前田沙織ファイナンシャルアドバイザー
ファイナンシャルアドバイザーの前田沙織です。 新卒から証券業界でのキャリアを開始し、2019年よりアドバイザーとして独立。様々なお客様のお金の質問や不安に応え、提案しています。 お問合せよりお気軽にご連絡ください。