株主手帳連載【アフターコロナの観光】

私が執筆している投資月刊誌「株主手帳」の2022年5月号掲載原稿を編集部のご協力を頂いてこちらにも共有させていただいています!

毎年大型連休が近づくと、そろそろ夏の旅行の予定を立てようかなぁと思うのですが、コロナ禍によりこの2年はなかなか旅行もままならなかった方も多かったのでは。しかし、世界に目を向けてみると、イギリスが世界に先駆けてマスクや隔離などのコロナ規制を全廃するなど、欧米諸国はパンデミックからの脱却という青写真を描き始めています。わが国でも水際対策が緩和され、ワクチン接種条件などを満たせば隔離なしで出入国ができるようになり、外国人留学生の円滑入国も始まりました。いつ強力な新型変異株が現れるのかという恐れは消えませんが、コロナ禍も3年目の春を迎え、人々が世界をまた自由に飛行機で往来する日を取り戻すため、少しずつ前進しているのは確かなようです。今月はアフターコロナとともに蘇る「観光」にスポットをあてたいと思います。

「海外旅行なしでも収益化」が進む航空業界

海外旅行需要が壊滅状態となり、海を越えた人流を前提にしていた航空業界は言うまでもなく大打撃を受けたわけですが、悲観するばかりではないようです。ANAホールディングス(9202)は新型コロナウイルスの影響で21年3月期には4046億円と過去最大の最終赤字を計上し、22年3月期も1000億円の最終赤字を見込んでいますが、23年3月期の黒字化は「必達目標」とし、黒字化に自信を見せています。芝田社長によれば「2年間で当社のコスト削減は相当程度進んだ」としており、損益分岐点が下がったことによりコロナが落ち着いていた21年10~12月期程度の国内旅客の回復が見込めれば、黒字化が実現するとのこと。コロナの新しい変異株を含め先の見通しは依然難しいですが、海外旅行需要を入れずに黒字化できる企業体質の改善は、相当なコスト削減努力の賜物と言えるでしょう。

安定株の鉄道銘柄も収益改革進む

次に、国内の運輸事業はどうでしょうか。外出自粛や海外からの訪日客の蒸発、一時期の駅ビルや商業施設等の店舗閉鎖などコロナ禍の影響が甚大であったJR本州3社。その序列は長らくJR東日本(9020)、JR東海(9022)、JR西日本(9021)の順で定着してきましたが、コロナ禍により新幹線収入に売上の9割を依存するJR東海がJR西日本を下回り序列に変化がありました。各社ともみどりの窓口の閉鎖、乗車券のチケットレス化をはじめとする駅オペレーションの省力化を進めています。もともとディフェンシブ銘柄として安定的に売上、利益を出すとされていた鉄道銘柄ですが、安定的ゆえ劇的なコスト削減や体質改革を図りにくい中、コロナ禍はそれを後押ししたと言えます。今後は各社とも、需要がコロナ前の9割程度までにしか復活しなかったとしても、利益を上げられる体質へと強化を目指しています。抑えられていた旅行需要の反動や政府・自治体による喚起策、企業による国内出張の回復が追い風となる可能性があり、更なるコスト削減、単価をあげる工夫、貨物輸送強化など収益強化策による復活を期待したいと思います。

非接触型企業の商機広がる

筆者もこの2年、非接触型の購入体験が増えたのですが、旅行の予約にしてもそうではないでしょうか。以前は窓口に並び、申込書に記入し、小一時間かけてパッケージ旅行の申し込みをしたものですが、今はすき間時間にスマホ一つで様々な旅行商品の比較や予約ができます。

航空券販売サイト「skyticket(スカイチケット)」を運営するアドベンチャー(6050)、「エアトリ」を運営するエアトリ(6191)、旅行情報サイト「トラベルコ」を運営するオープンドア(3926)などがあります。またこのような宿泊予約サイトに掲載しているホテル側が、客室在庫や宿泊者の予約情報をまとめて管理できるシステムである「手間いらず」を主力商品としている手間いらず(2477)も関連銘柄としてあります。

いかがでしたでしょうか。行動規制を強いられ、お家時間を楽しむのがすっかり上手になった今日この頃ではありますが、コロナを忘れて日常とは違う世界を楽しんでみたくなるのが人情というもの。これからしばらく行楽にぴったりの季節が続きますし、気持ちは明るく、アフターコロナの世界に思いを馳せてみたいと思います。

ポイント!

いかがでしたでしょうか?長らく「自粛」を強いられていた観光ですが、3年目の今年の観光シーズンはワクチン接種も終えた人たちの旅行が盛んになる気がしますね

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

ABOUT US
前田沙織ファイナンシャルアドバイザー
ファイナンシャルアドバイザーの前田沙織です。 新卒から証券業界でのキャリアを開始し、2019年よりアドバイザーとして独立。様々なお客様のお金の質問や不安に応え、提案しています。 お問合せよりお気軽にご連絡ください。